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設計ガイドライン vol.03

マルチテナントAIエージェント、テナント分離3パターンの選び方

AS 柴田 彰洋
Feynma Technology / アーキテクチャ
2026.07.15
この記事の要点
  • マルチテナントAIエージェントのテナント分離は「サイロ」「プール」「ブリッジ」の3パターンに整理できます
  • Runtime・Memoryなど層ごとに異なるパターンを選ぶこともできます
  • エージェントは自律的に動かすのではなく、代理実行+スコープ限定トークンで制御するのが実務的です

複数のお客様やテナントにAIエージェントを提供する構成を検討する際、必ず議論になるのがテナント分離の方式です。私たちは実務上、分離のパターンを3つに整理して検討しています。

テナント分離の3パターン

パターン分離度コスト向く場面
完全分離(サイロ)高い高くなりやすいテナントごとの隔離要件が強い場合
全顧客で共有(プール)低い抑えやすい隔離要件が緩く、効率を優先したい場合
両取り(ブリッジ)中間中間層によって要件が異なる場合

層ごとに選べるという発想

ここで重要なのは、この3パターンをシステム全体で一律に決める必要はないという点です。Runtime、Memoryといった層ごとに、それぞれ異なるパターンを選ぶことができます。たとえばRuntimeは完全分離としつつ、Memoryは条件付きで共有するといった組み合わせも可能です。すべての層を同じ分離度で揃えようとすると、コストや実装の柔軟性を犠牲にしてしまうことがあるため、層ごとの要件を分けて考えることをおすすめしています。

エージェントは自律ではなく「代理実行」で制御する

もう一つ、私たちが設計上重視しているのが、AIエージェントを自律的に動かすのではなく、「代理実行+スコープ限定トークン」という考え方で制御することです。エージェントに広い権限を持たせて自律的に判断させるのではなく、あくまで人間やシステムの代理として、限定されたスコープのトークンの範囲内でのみ動作させます。これにより、テナントをまたいだ意図しないアクセスや、権限の逸脱を防ぎやすくなります。

テナント分離は「どちらか一方」を選ぶ問題ではなく、層ごとに使い分ける設計問題です。

設計の順番として意識していること

私たちが実際の案件で分離方式を検討する際は、まずシステムをRuntime、Memoryといった層に分解し、それぞれの層で求められる隔離要件とコスト制約を洗い出すところから始めます。すべての層をいきなり同じ方式に揃えようとせず、層ごとに3パターンのどれが適しているかを個別に判断してから、全体としての構成をまとめる、という順番です。この順番を踏まないと、後になって一部の層だけ分離度を上げ直す、といった手戻りが発生しやすくなります。

まとめ

マルチテナントAIエージェントの分離方式は、サイロ・プール・ブリッジの3パターンから、層ごとに最適なものを組み合わせて選ぶのが実務的です。あわせて、エージェント自体は自律ではなく代理実行+スコープ限定トークンで制御することが、安全な運用につながります。

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