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連載:Bedrock 実務検証 vol.03

Bedrock Managed KB の Smart Parsing は日本語のPowerPointを読めない — 日英で同一資料を作って比較検証した

RK 加納 龍生
Feynma Technology / AIエージェント基盤
2026.08.04
検証:2026.07
検証結果サマリー
  • 同一デザイン・同一画像の pptx を日本語版と英語版で用意し、retrieve API のレスポンスを比較した
  • 英語版は全文が正確に抽出される。日本語版は日本語文字が消え、数字・記号・ローマ字だけが残る
  • エラーにならない。取り込みも検索も成功し、AIは何かしら答える。気づけない
  • txt のように文字の読み取りが不要な形式なら、日本語でも問題なく扱える

社内資料を検索できるようにしたい、というご相談をいただくとき、Amazon Bedrock の Managed Knowledge Base は有力な選択肢です。パワポやPDFをS3に置けば、あとはマネージドサービスが読み取ってくれる。構築の手間が大幅に減ります。

ただ、弊社の検証で日本語のPowerPointとPDFに限って、テキストがほとんど抽出されない挙動を確認しました。英語なら問題なく動きます。日本語だけ落ちます。

検証の方法

Managed Knowledge Base には Smart Parsing という機能があります。pptx や PDF に含まれる画像からテキストを読み取る処理です。図の中に文字が入っている資料でも中身を拾えるようにするための仕組みです。

言語以外の条件を揃えるため、まったく同じデザイン・同じ画像を使った pptx を、日本語版と英語版の2つ用意しました。そのうえで bedrock-agent-runtime の retrieve API を叩き、レスポンスを並べています。

検証環境
サービスAmazon Bedrock Knowledge Bases(managed database)
パーサーSmart Parsing(Managed Parser)
埋め込みモデルamazon.titan-embed-text-v2
チャンク戦略デフォルト(最大トークン300 / オーバーラップ20%)
検証データ同一デザイン・同一画像の pptx(日本語版/英語版)
確認方法bedrock-agent-runtime retrieve API のレスポンス比較
検証時期2026年7月

結果

英語版 pptx — 全文が抽出される
Quarterly Report FY2026
Revenue: 120 million yen
Growth rate: 15% YoY
※ Excluding one-time items
日本語版 pptx — 文字が消える
四半期レポート FY2026
売上高: 120
成長率: 15% 前年比
一時要因を除く
※ 実際のレスポンスを、内容を差し替えて再現したもの。挙動は検証時のとおり

一部が化けるのではなく、日本語部分がまるごと落ちます。結果として「120」「15%」「※」「FY2026」だけが残った、意味の取れない断片がナレッジベースに入ります。

厄介なのは、エラーにならないことです。取り込みは成功し、検索も動き、AIは何かしら答えます。元の資料の中身をほとんど知らないまま答えている状態です。動いているように見えるので、本番まで気づかないことがあります。

回避策

同じ検証で、文字の読み取りが不要な形式であれば日本語も問題なく扱えることを確認しています。txt のように、テキストがそのまま入っているファイルです。

現時点での現実的な対処は2つです。

対処内容
先にテキスト化する日本語の pptx / PDF は Managed KB に直接入れず、別の手段でテキストを抽出してから投入する
retrieve で必ず確認する取り込み後に retrieve API を叩き、日本語が実際に返ってくるかを目視する。取り込み成功のログだけを見て次に進むと、この問題は本番まで残る

周辺にも、先に知らないと作り直しになる制約がある

同じ時期に Managed Knowledge Base を CLI から構築した際、公式ドキュメントには整理されていない制約がいくつか出てきました。

# AgentCore CLI で Managed KB を構築するときの制約(2026年7月時点)

1. KB作成前に S3バケットを先に作る必要がある
2. KB作成後、GatewayTarget の作成は別ステップ
3. データソースの自動同期は 初回のみ
   → 後からS3に置いても再同期されない。EventBridge / S3トリガーが別途必要
4. 埋め込みモデルは titan-embed-text-v2 に固定、扱えるのはテキスト系のみ
5. パーサーは Managed Parser 固定、チャンク戦略も 後から変更できない
   → 精度が出なかったとき、調整ではなくKBの作り直しになる

いずれも「使えない」という話ではありません。ただ先に知らないと作り直しになる種類の制約です。特に5番は、検索精度が出なかったときにチャンクの切り方で改善する、という一般的な打ち手が取れないことを意味します。

あわせて、AWS 公式の参考ノートブック(awslabs/agentcore-samples)はベクトルストアに S3 Vectors を使っていますが、S3 Vectors は pptx に対応していません(対応形式は pdf・md・txt)。弊社の案件では pptx をそのまま取り込む必要があったため、標準の Knowledge Base(managed database)を採用しました。公式サンプルの構成が自分の要件に合うかは、扱うファイル形式から先に確認したほうが早いです。

まとめ

マネージドサービスは構築の手間を大幅に減らしてくれます。一方で中の処理はブラックボックスなので、「日本語」という条件が加わったときに何が起きるかは、自分で確かめるしかないのが現状です。

日本語のドキュメントで RAG を組もうとしている場合は、まず1ファイルだけ入れて retrieve の戻りを見てください。それが一番早い確認方法です。

※ 本記事の検証は2026年7月時点のものです。AWS側の修正により挙動が変わる可能性があります。

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